冬から、春になる頃。
私の稽古場では、まだ少し肌寒いこの時季に「番茶手前」を毎年しています。煎茶や玉露のお手前と、道具の取り合わせがかわります。
番茶手前
お茶屋さんで「番茶」というと、一般に、新芽が伸びて固くなった葉や、古葉、茎などから作られたお茶のことをいいます。地方特有の番茶(晩茶)もあり、日常的なお茶として、飲まれています。
「ほうじ茶」は、煎茶の葉や茎、番茶などを焙じたお茶。番茶とほうじ茶は、作りかたが違うのですが、私が通う煎茶道では、玉露や上級煎茶などをほうじ器でいり、番茶手前の流れでお茶をいれます。この日は、碾茶(抹茶の原料となる葉) の茎の部分を焙じました。
お茶の香り
玉露や、煎茶でお手前をする時は、最初にお香を焚きます。
番茶手前の時は、お香を焚きません。お茶の香りに五感を研ぎすまします。ほうじ器に懐紙をはさみ、お茶の葉をいれ、湯沸かしをおろした、涼炉(お湯を沸かす道具)でお茶を焙じます。ほうじ器や、懐紙が焦げないように、丁寧に焙じていると、ほのかにお茶の香りが漂ってきます。茶室内に、香りが広がるころ、急須にお茶をいれました。
碾茶棒のあわい甘みと、お茶の香ばしい香りがごちそうです。
春の香り
番茶手前のお茶には、煎餅や素朴なお菓子などがあいますが、沈丁花(ジンチョウゲ)のお菓子が美味しそうだったので、と先生にだしていただきました。
「日本三大芳香木」春の、沈丁花(ジンチョウゲ)、夏のクチナシ、秋の金木犀(キンモクセイ)、香りの強い花をつける樹木をそうよんでいます。冬の蝋梅(ロウバイ)とあわせて、「日本四大芳香木」ともいうそうです。先生が、沈丁花の香りをかいでみてはと、茶室にもってきてくださいました。
沈丁花は、香木の「沈香」のようないい香りと、「丁子(チョウジ)」(クローブ)の香りもすることから、二つをあわせ名付けられたともいわれています。香水のようないい香りでした。
「春の香 沈丁花」と銘のついたお菓子。春の香りとともに、美味しくいただきました。